1. 恋人との「別れ」に法律上の手続きはない?
結婚や離婚には、役所への届出という明確な手続きがありますよね。始まりも終わりも公的な記録に残ります。でも、恋人関係には、そうした仕組みがありません。
「付き合おう」も「別れよう」も、法律が形式を要求する行為ではないんです。だから、別れるのに相手の同意も、正当な理由も、特別な手続きも必要ありません。たとえ相手に「別れたくない」と言われても、交際を続ける法的な義務はないんですね。
これは一見、自由で良いことのように思えますが、その裏返しも存在します。「連絡が途絶えたから、その時点で法律上の別れが成立した」と扱う規定も存在しないということです。「◯か月連絡がなければ自然消滅」といった法的な基準はどこにもないんですよ。
つまり「音信不通で別れたことになるか」という問いに、法律が一律の答えを用意しているわけではありません。実務で問題になるのは、関係が終わったかどうかで結論が変わる「何か」が残っているかどうか、なんです。これは、ちょっと意外なポイントですよね。
2. 「別れたかどうか」で変わるもの・変わらないもの
では、音信不通になったとしても、法律上影響を受けないことと、関係の終わり方が評価に影響しうることには、どんな違いがあるのでしょうか?
音信不通になっても影響を受けないこと
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貸したお金や立て替えたお金の返還義務
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妊娠している場合の認知や養育費の問題
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借りたまま、預けたままになっている物
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相手の行為が犯罪にあたる場合の刑事責任
これらは、たとえ連絡が取れなくなっても、法的な責任や義務が消えるわけではありません。お金の貸し借りって、恋人同士だと曖昧になりがちですが、法的にはしっかり残るんですね。
関係の終わり方が評価に影響しうること
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婚約していた場合の責任
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内縁(事実婚)だった場合の解消の責任
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相手が既婚者だった場合の関係の評価
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別の相手と交際することが「裏切り」と評価されるか
これらのケースでは、関係の性質や終わり方が、後々のトラブルの評価に大きく影響することがあります。特に婚約や内縁関係は、一般的な交際とは異なる重みがあるんですね。
3. 場面別の考え方
もう少し具体的に、様々なケースを見ていきましょう。
(1) 婚約していた場合
婚約は、将来結婚する約束のこと。指輪の購入や結納といった形式は必ずしも必要ではありません。もし婚約が成立していた場合、正当な理由なく一方的に破棄すると、慰謝料の問題が生じることがあります。
もし、あなたが音信不通にされた側なら、長期間連絡が取れず話し合いにも応じないという事情は、あなたから関係を解消しても不当な破棄とは評価されにくい方向に働くでしょう。逆に、自分から連絡を絶つ形で婚約を終わらせた場合には、正当な理由のない破棄と評価されるおそれがあります。式場や新居の費用など、実費の清算が問題になることもありますから、注意が必要ですね。
(2) 同棲・内縁だった場合
単なる同棲と内縁は、実は同じではありません。内縁と評価されるには、婚姻に準ずる共同生活の実体があることが必要とされます。交際期間の長さや子どもの有無だけで、当然に保護が及ぶわけではないと判断された裁判例もあるんですよ。
もし内縁にあたる関係を一方的に解消した場合、慰謝料の問題が生じる可能性があります。また、住まいの問題はこれとは別の話。名義人でない側を実力で追い出したり、残された荷物を勝手に処分したりすることは認められません。賃貸借契約の名義や連帯保証、公共料金の契約も、連絡が途絶えただけでは消えませんから、ここはしっかり確認しておきたいポイントです。
(3) 相手が既婚者だった場合
もし相手が既婚であることを隠して交際していたのであれば、貞操権の侵害として相手本人に請求できる余地があります。これは、なかなかショックなことですよね。
反対に、もしあなたが既婚者と知っていて交際していた場合、相手の配偶者から慰謝料を請求される立場に立つこともあります。この場面で「いつ関係が終わったか」は、慰謝料の金額の評価などに影響しうる事情になります。時効の起算点は、請求する配偶者が不貞の事実と相手方を知った時とされており、音信不通になった日ではないので注意が必要です。
(4) 妊娠しているとき
これは本当に、当事者同士だけの問題では済まないですよね。関係の終わり方は、父子関係に影響しません。婚姻していない場合、法律上の父子関係は認知によって生じ、養育費はそこが入口になります。
相手が応じない、連絡が取れないという場合には、家庭裁判所の認知調停や認知の訴えという手続きがあります。「認知しない」という当事者間の約束によって、子の側の請求権が失われるわけではありませんから、もしもの時は専門家に相談することが大切です。
(5) お金や物のやり取りがあるとき
貸したお金の返還義務は、交際が終わったかどうかとは関係なく残ります。返済期限を決めていなかった場合の時効の考え方も、別の枠組みで判断されます。
ただし、渡したものが「贈与」なのか「貸付」なのかは、当事者の呼び方ではなく、実態と証拠で判断されます。デート代やプレゼントは贈与と評価されることが多く、連絡が取れなくなったからといって当然に返還を求められるものではありません。この線引きは、恋人同士だと特に難しいですよね。
(6) 音信不通のまま、別の人と交際してよいか
婚姻していない交際関係に、法律上の貞操義務があるわけではありません。そのため、後から「浮気だ」と言われても、慰謝料が認められるのは限られた場面です。ただし、婚約や内縁と評価される関係であれば、別に考える必要があります。
あいまいなまま関係を重ねるより、区切りを一度伝えておくほうが、後の争いを避けやすいといえます。新しい恋に進むタイミングって、本当に難しいですよね。でも、自分の気持ちを整理するためにも、一度は区切りをつけておくのが賢明かもしれません。
4. 連絡が途絶えた側にできること
もし、あなたが突然連絡が取れなくなった側の立場だったら、どんな行動が考えられるでしょうか?
(1) まず安否を考える
事故や急病、事件に巻き込まれている可能性もゼロではありません。警察への行方不明者届は、親権者、配偶者(事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む)、現に監護する者のほか、同居人、雇主その他社会生活において密接な関係を有する者が出せるとされています。同居していない交際相手の場合は受理されないこともありますが、事件性がうかがわれるときは、警察相談専用電話(#9110)に相談してください。心配な気持ち、僕もよくわかります。
(2) 自分の側で区切りをつける
返事がなくても、あなたの意思は一度、記録の残る形で伝えておくことが考えられます。関係を終わりにすること、以後連絡しないこと、貸したお金があればいつまでに返してほしいことなどです。後日「別れたつもりはなかった」と言われたときの手がかりになりますし、復縁を迫られた場合には、拒絶の意思を示した記録としても意味を持ちます。何度も送るのではなく、一度、簡潔に伝えるのが基本です。
(3) 所在が分からない相手に請求したいとき
弁護士が事件を受任した場合には、弁護士会照会によって契約者情報などの照会を求められることがあります。ただし、必ず回答が得られるとは限らず、調査だけを単独で依頼することは基本的にできません。所在が判明しない場合でも、付郵便送達や公示送達といった方法で手続きを進める余地はありますが、ハードルは高く、判決を得られたとしても実際に回収できるかは別の問題です。
(4) 避けたい対応
感情的になってしまう気持ちもわかりますが、これは絶対に避けたい行動です。
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SNSや共通の知人への暴露:内容が真実であっても名誉毀損やプライバシー侵害の問題が生じえます。
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職場や実家への繰り返しの連絡・訪問:ストーカー規制法の対象になりうる行為です。「相手が音信不通にしたのが悪い」という事情も、該当性を左右するものではありません。
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相手のSNSやメールのアカウントに無断でログインすること:不正アクセス禁止法の問題になります。
5. 連絡を絶つ側が意識しておきたいこと
もし、あなたが連絡を絶つ側だとしたら、どんなことを意識していますか?フェードアウトそのものを禁じる法律はありませんし、身の危険を感じる相手と距離を取るための沈黙が責められるものでもありません。そのうえで、次の点は意識しておく価値があります。
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相手が「まだ終わっていない」と考えていれば、連絡や訪問が続きやすくなります。安全上の問題がなければ、一度は明確に伝え、その記録を残しておくのが良いでしょう。
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借りている物、同棲していた住居の名義や連帯保証、共同の契約は、連絡を絶っても自動的には解消されません。
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妊娠、金銭、婚約に関する問題は、音信不通にしても残ります。
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相手からの言動に危険を感じるときは、無理に会おうとせず、警察や弁護士を窓口にすることを検討してください。
6. よくある疑問
皆さんの疑問にもお答えしましょう。
Q:何か月連絡がなければ、法律上「別れた」ことになりますか。
A:期間の基準はありません。争いになった場面ごとに、やり取りの内容や当事者の言動から判断されます。
Q:音信不通にされたこと自体で慰謝料を請求できますか。
A:交際関係の解消それ自体を理由とする慰謝料は、原則として認められにくいと考えられています。婚約や内縁だった場合、妊娠を告げた後の一方的な対応、暴力や暴露といった別の事情があるときは、評価が変わりえます。
Q:「別れるとは言っていない」と復縁を迫られています。
A:交際を続ける義務はありません。拒絶の意思を一度伝え、それでも続く場合には、ストーカー規制法に基づく警告や禁止命令、民事上の対応を検討することになります。
Q:本人ではなく相手の親から連絡が来ました。
A:成人同士のトラブルについて、親であるというだけで当然に交渉権限が生じるわけではありません。本人から連絡するよう伝えるのが原則的な対応です。
まとめ
改めて、今回のポイントをまとめます。
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交際の開始・終了に法律上の形式はなく、音信不通を「別れの成立」と扱う規定もない
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「◯か月で自然消滅」という法的基準は存在しない
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貸金、妊娠と認知、預けた物、刑事責任は、連絡が途絶えても残る
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婚約・内縁だった場合は、解消の仕方が責任の評価に影響しうる
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相手を追う行為も、連絡を絶つ行為も、行き過ぎると別の法的問題を生む
連絡が取れないまま時間だけが過ぎると、金銭の回収や妊娠への対応など、期限のある問題ほど動きにくくなります。もし、整理すべきことが残っていると感じたら、早い段階で弁護士に相談し、事実関係と手元の記録を確認しておくことをおすすめします。
若井綜合法律事務所さんには、「突然連絡が取れなくなった恋人とは、法律上もう別れたことになるのでしょうか」「自然消滅だと思って別の相手と交際したところ、後からトラブルになった」といった相談が継続的に寄せられているそうです。SNSやマッチングアプリの普及により、LINEのブロックや既読スルーをきっかけに交際が曖昧なまま終わるケースが増える一方、その後の法的トラブルも少なくないんですね。
困った時は、一人で悩まずに専門家の力を借りることも大切だと、僕も改めて感じました。
それでは、また次回のKENSAKUコラムでお会いしましょう!
この記事の監修者
若井 亮(わかい りょう)/代表弁護士 弁護士法人若井綜合法律事務所(東京弁護士会所属)
男女問題・男女トラブルに強い法律事務所の代表弁護士。不倫慰謝料、妊娠トラブル、婚約破棄、パパ活トラブル、ストーカー被害など、他人に相談しづらい問題を穏便かつ内密に解決することを得意とする。相手の脅迫的な言動にも毅然と対応し、依頼者の平穏な生活を取り戻すために尽力している。
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