渡し終えたプレゼントは、原則として返す必要がない
「好きだから」「相手のために」と渡したプレゼントや支払ったデート代。これらは法律上、「贈与」と判断されることが多い、ということをご存じでしたか?贈与とは、財産を無償で相手に与える意思を示し、相手がそれを受け入れることで成立する契約のことです。特別な契約書がなくても、口頭で「あげるよ」と言って相手が受け取れば、それで成立するんですよ。
よく誤解されがちなのが、「書面がない贈与はいつでも取り消せる」という話です。実は、民法では「履行の終わった部分については、この限りでない」と定められています。つまり、実際に渡してしまったプレゼントや、すでに支払いを済ませたデート代については、原則として後から「返してほしい」と一方的に求めることはできない、というのが基本的な考え方なんです。
裁判でも、交際中の男女間の贈り物は、相手への好意からくるものであって、「後で返してもらう」という意図は通常ない、という見方が示されているケースもあります。まさに「貰い切り、遣い切り」という感覚に近いのかもしれませんね。
例外的に返還義務が問題になり得る4つの場面
では、どんな場合でも返さなくて良いのかというと、そうではありません。中には、返還義務が問題になり得るケースも存在します。
1. 「贈ったのではなく、貸していた」と主張された場合
お金であれば「消費貸借」、物であれば「使用貸借」にあたる、という主張です。もし「貸した」という合意があったのであれば、返還義務が生じる可能性も出てきます。
ただ、ここで大切なのは、「貸したことを証明する責任は請求する側にある」という点です。借用書があったり、返済を前提としたやり取りの記録があったりしない限り、「貸していた」という主張が認められるのは難しいかもしれません。高額なものや、通常は贈与しにくい品物については、慎重な判断が必要になることもありますね。
2. 「条件付きで渡した」と主張された場合
「毎週会う約束だったから渡したのに、約束が守られないなら返してほしい」といった主張です。贈り物に条件を付けることは、交際関係においては通常不自然だと考えられます。契約書などで明確に条件が定められていない限り、口頭でのやり取りだけでは、条件付きだったと認められるのは難しいケースが多いでしょう。
3. 「騙し取られた」と主張された場合
恋愛感情を利用して金銭を騙し取られた、という主張です。詐欺による意思表示は取り消すことができますが、詐欺を主張する側が「最初から騙すつもりだった」という故意を証明する必要があります。交際中の曖昧なやり取りの中で、後から約束が果たされなかったとしても、すぐに詐欺と認定されるわけではありません。しかし、実在しない入院費用を偽って金銭を受け取ったなど、具体的な虚偽があった場合は話が変わってきます。
4. 自分から「返す」と約束してしまった場合
法的には返す義務がなかったとしても、その場の勢いや精神的な負担から「返します」と答えてしまうと、新たな合意が成立したとみなされてしまう可能性があります。「少しだけ支払って穏便に済ませたい」という気持ちも分かりますが、それがかえって「義務を認めた」と受け取られかねません。安易に返事をせず、まずは冷静に判断することが大切です。
請求を受けた時に避けたい対応
もし元恋人から返還を求められたら、感情的にならず、落ち着いて対応することが重要です。
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その場で「返す」と答えないようにしましょう。まずは、本当に返す義務があるのかどうかを確認するのが先決です。
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一部だけ支払って済まそうとしないこと。これも義務を認めたと解釈されるリスクがあります。
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やり取りの記録(LINE、メールなど)は削除せず、保存しておきましょう。これは、いざという時に自分を守るための大切な証拠になります。
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感情的な応酬は避け、冷静な姿勢を保つことが、余計なトラブルを防ぐことにつながります。
「無視してよいか」は請求の形によって変わる
支払義務がない場合、相手の要求に応じる必要は原則ありません。しかし、請求がどのような形で届いたかによって、対応の仕方が変わってきます。
LINEや電話、あるいは内容証明郵便には、それ自体に支払いを強制する力はありません。内容証明郵便は、あくまで「いつ、どのような内容の郵便を送ったか」を郵便局が証明するもので、その請求が正しいかどうかを証明するものではないからです。
しかし、裁判所から書類が届いた場合は、話はまったく別です。例えば「支払督促」が届いたら、受け取ってから2週間以内に異議を申し立てないと、相手の申し立てによって強制執行が可能になることがあります。また、「訴状」が届いたのに答弁書を出さずに期日を欠席すると、相手の主張を認めたとみなされ、敗訴してしまう可能性もあります。
本来なら返す義務がなかったとしても、裁判所からの書類を放置したために、支払いを命じられてしまう、ということが起こり得るのです。裁判所名義の書類が届いたら、内容を問わず、必ず期限を確認し、早い段階で専門家に相談することをおすすめします。
請求の仕方が一線を越えている場合
お金を返してほしいと求めること自体は、権利の主張として行われる限り、すぐに違法とは言えません。しかし、その手段や態度が社会通念上の範囲を超えてくる場合は、別の問題が発生する可能性があります。
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「家族や職場に知らせる」「弁護士に依頼する」といった心理的圧力を伴う形での請求は、時には脅迫罪や恐喝罪、強要罪にあたる可能性も出てきます。
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また、返還のやり取りを口実に執拗な接触が繰り返される場合は、ストーカー規制法に触れることもあります。
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たとえ自分の所有物だと主張しても、相手が占有している物を無断で持ち去る行為は、窃盗罪に問われる可能性もありますので、注意が必要です。
落ち着いて進めるための手順
もし返還請求を受けてしまったら、次のような手順で落ち着いて対応を進めてみてはいかがでしょうか。
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受け取ったものを整理する: いつ、何を、どのような理由で受け取ったのかを、できるだけ具体的に書き出してみましょう。
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記録を保全する: LINEやメールのやり取り、写真、振込履歴など、関連する情報は決して削除せず、保存しておいてください。これは、あなたの味方になる大切な証拠です。
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請求の中身を特定する: 誰が、何について、いくらを、どんな根拠で、いつまでに求めているのかを明確に把握しましょう。大切なのは、請求の名目ではなく、「渡された当時の実態」です。
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やり取りの窓口を一本化する: 直接の感情的な応酬は、心身の負担になるだけでなく、紛争を長引かせる原因にもなりがちです。可能であれば、弁護士などの専門家を介して、冷静に交渉を進めることを検討してみるのも良いかもしれません。
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仮に応じる場合も、必ず書面にする: もし、何らかの形で支払いに応じることになったとしても、その内容は必ず書面に残しましょう。支払う範囲を明確にし、今後はお互いに一切の請求をしない旨(清算条項)を盛り込んでおくことで、同じ請求が繰り返されるのを防ぐことができます。
いかがでしたでしょうか。元恋人からの返金要求は、精神的な負担が大きいものですよね。しかし、渡し終えたプレゼントやデート代は、原則として返す必要がない、ということを知っておくだけでも、少しは心が軽くなるのではないでしょうか。もちろん、例外的なケースもありますので、もし不安なことがあれば、一人で抱え込まず、弁護士のような専門家に相談することをおすすめします。
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それでは、また次回のコラムでお会いしましょう! KENSAKUでした。




